〜主張@ここがヘンだよ、佐賀県の主張
何がなんでも新幹線という佐賀県。あの手この手を使って、建設反対派の人々を説得させようと躍起になっている。しかし、実際は「えぇ?どう考えてもおかしいだろ!」ということを平気で主張している。このページは、そんな佐賀県の矛盾を突いて行くものである。―1、佐賀県=長野県?―
「県民だより 2006年2月号」の長崎新幹線特集記事には、佐賀県とは何のゆかりもない長野県にある北陸(長野)新幹線佐久平駅周辺の、新幹線開業前と開業後の発展状況を比較した写真が掲載されていた。このページが言いたいのは「新幹線ができると、こ〜んなに街が変わるんですよ〜」ということだろう。 だが、佐久平駅は長野県でも首都・東京近いところにあり、東京駅からの所要時間も「あさま」で約70〜80分だ。佐賀と立地条件があまりにも違いすぎる。 つまり、この佐賀県の主張は、根拠の全く無い、都合良いことを並べただけとも言えるものだ。―2、長崎新幹線V.S.佐賀発大阪行きの航空便―
佐賀県公式サイト内に設置されている「西九州ルートってどんなもの?:九州新幹線西九州ルート なぜとなに」には、 「フリーゲージトレイン(※長崎新幹線とは参照)になれば、新鳥栖から博多までは、新幹線(鹿児島ルート)区間を走行します。また、博多から山陽新幹線に直通乗り入れでき、岡山や大阪まで乗り換えなしで行くこともできるようになります。」 と書いてある。 現在、佐賀や長崎から大阪方面へ鉄路で向かう場合は、在来線特急で博多駅まで行き、一旦階段を下りて、再び新幹線ホームへ行き、新幹線に乗り換えることになる。乗り換えには急いでも5分以上の時間を要しており、非常に不便である。なので、佐賀や長崎から乗り換えなしで新大阪に行くことが出来ると、非常に便利になるだろう。 だが、長崎新幹線の新鳥栖(仮称)〜武雄温泉間、諫早〜長崎間は在来線を利用するため、新幹線では通常起こり得ない置き石や踏切事故で、列車の遅れや運休が発生する恐れがあるのだ。その影響は長崎新幹線に留まらず、博多〜新鳥栖間で線路を共用する鹿児島新幹線への多大なる影響は免れないし、乗り入れる山陽新幹線や接続する東海道新幹線にも遅れが発生するだろう。 もう一つ心配なのは、“県営空港”の別名がある、佐賀空港のことである。佐賀空港からは、東京(羽田)と大阪(伊丹)行きの航空便が“合わせて1日数往復”運航されている。しかし、どちらも経営が芳しいとはいえない。空港の立地条件が悪い上に、同じ航路利用であれば本数の多い福岡空港の方が便利だし、大阪ならば、新幹線でも有効範囲だからである。空港の運営自体も、毎年2億円の赤字とされている。 佐賀空港発便の低空飛行ぶりは、数字の上でも裏付けられる。一般的に、国内線の採算ラインは、搭乗率6割と言われているが、2006年(平成18年)の平均の実績で、東京便が辛うじて6割を超えているのに対し、大阪便は57%と採算割れとなっている。また、しばしば機器の故障が発生しており、その度に運休となって、結局福岡空港経由で行く羽目になることがあり、県民の不信感を招いているのも事実だ。ちなみに、大阪便は、大阪空港に到着すると、お客さんを乗せたまま東京行きに運用が変更になっており、ここでも、佐賀―大阪間だけのフライトでは、採算が合わないことを示している。 先述したように、佐賀県は、長崎新幹線列車を新大阪まで乗り入れさせると主張している。そうなると、真っ先に影響を受けるのは佐賀発大阪行きの航空便である。ただでさえ搭乗率が悪いのに、さらにそれを低下させるつもりなのだろうか。こうなると、大阪便は撤退せざるを得ない状況になる。だが、それでは空港の必要性がますます低下してしまう。これを巷では「自分の首を自分で締める」というのだ。―3、県の言うことを聞いたら、数億円プレゼント!―
長崎新幹線が着工できない理由の一つとして、鹿島市と杵島郡江北町が並行在来線の経営分離に反対していることは、「なぜ長崎本線が経営分離されなければならないのか」で説明した通りである。 元々新幹線の建設及び並行在来線の経営分離に反対していた自治体は他にもあって、同じ長崎本線沿線の太良町や白石町がそうであった。だが、結局その2町は、数億円のお金を佐賀県からプレゼントしてもらうことにし、経営分離に同意してしまったのである。これには「強引過ぎる」と古川知事に対して県民の批判が集中した。この数億円は、佐賀県全域の県民から徴収した貴重な税金である。一方、鹿島市の農家が数年前から準備を進めていた事業に対しては、「事業中止」が言い渡された。鹿島市の農家は「新幹線不同意の報復だ」と佐賀県に反論したが、佐賀県はあっさりと「それとは関係ない」と却下した。 新幹線に同意すれば数億円、しなければ事業打ち切り……。鹿島市の農家には、あまりにひどい仕打ちである。どう考えてもヘンだよ、古川知事……。 ※その後、県が一旦打ち切った鹿島市の農家に対する事業は、2007年(平成19年)6月に補正予算案に盛り込まれる形で復活した。だが、未だに一度事業を打ち切った理由は明確に発表されていない。また、三者同意により、沿線自治体の同意が不要になったが、両町に払われた数億円は、返還されなかった。―4、世論調査と佐賀県の主張に矛盾アリ―
「県民だより 2006年5月号」には、嬉野市に住む観光業に関わる男性のこのような発言が載せられていた。「若者達は皆新幹線の開通を期待している」
実は、この発言、佐賀新聞社の世論調査と全く食い違っているのだ。 2005年(平成17年)10月に佐賀新聞が行った調査の結果によると、佐賀県全体で、建設賛成が28%、建設反対が56%だった。嬉野町(当時藤津郡)でも、根強い反対派の人たちがおり、この「若者達は皆新幹線の開通を期待している」というコメントは、県民の考えを根拠のないまま誘導しようとするものである。ちなみに、同年に西日本新聞が行った長崎県での街頭アンケートでも、賛成、反対が拮抗している。このアンケートによると、長崎市でさえ反対派が上回っているのだ。このような矛盾した意見を載せる佐賀県に、私は強い憤りを感じる。―5、県職員の給料カット→新幹線資金へ―
「新行財政改革・県、職員給与をカット」(佐賀新聞2007年11月8日付)。佐賀県は厳しい財政難を受け、教職員や警察官を含めた全職員の給与カットなどを行う改革案を発表した。そして、県職員の給料が実際に2008年(平成20年)4月からカットされた。一般職員でも月々4%ずつカットとなった。当然、県職員からは不満が出ている。また、学校に自動車で出勤する県立校の先生には、駐車場使用料として、月々数千円の“駐車料金”が課せられることになった。佐賀市内の某高校では、月3000円という。出勤して、駐車料金まで取られるとは……。何だか意味不明である(2008年/平成20年度については、実施凍結となった)。 1万4000人(平成19年度)を超える県職員は、大企業のない佐賀県では、言わば最大の「消費者集団」である(佐賀県民のうち、61人に1人が県職員である)。つまり、全職員が4%以上カットされたということは、それだけ地元の消費が少なくなったことになる。特に、外食をする機会が少なくなり、ぎりぎりの経営を続ける中心部の多くの飲み屋街には大打撃となったに違いない。 打撃を受けるのは、飲み屋街だけでない。県職員の給料で生活するその家族の消費も少なくなる。仮に4人家族とすれば、5万6000人の消費が佐賀県全体で少なくなったことになる。これを考えれば、ボーリング場などの遊戯施設から駄菓子屋まで影響を受けることになった。これでは、地域経済の低迷を招いてしまう。 一方、佐賀県は「長崎新幹線は予定通り造る」という。カットした給料の一部は、新幹線に回されるのだ。だが、これでは新幹線の建設を担当する一部の建設業者を潤すだけで、地域経済に良い効果を与えるとは考えにくい。それよりも、県職員の給料をそのままにすることで、1人あたりの消費を維持することが、地域経済のためになるのではないだろうか。 佐賀県は、新幹線を造ることで地域の発展に繋がると言うが、逆に地域をますます衰退させようとしているのである。―やっぱりどう考えてもヘンだよ、佐賀県。―
文中参考:(文中に直接提示しているものは除く) 長崎新幹線の新大阪乗り入れ:「西九州ルートってどんなもの?:九州新幹線西九州ルート なぜとなに」 (http://www.pref.saga.lg.jp/atcontents/kenseijoho/shinkansen/nazenani02.html) 採算ラインは搭乗率6割:「河北新報社・航空路線再編/納得いかぬ『地方切り捨て』」 (http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2007/02/20070204s01.htm) 佐賀空港発便の搭乗率:「国内定期便:平成10年度(開港年度)から18年度までの搭乗者数」(http://www.pref.saga.lg.jp/at-contents/kuko/gaiyou/jyoukyou/toujyousya.html) 佐賀空港は毎年2億円の赤字:「よみうりテレビ・ウェークアップ/神戸空港開港!地方空港は大丈夫?」 (http://www.ytv.co.jp/wakeup/news02/bn/2006/n02_060218.html)