雨の長崎・路面電車まつりの旅@

2006年(平成18年)11月11日に長崎電気軌道浦上車庫で開催された「路面電車まつり」に行った時の旅行記です。

 11月11日と言えば、ポッ○ーの日である。だが、私にとってはだから何だ!という日でもあり、「ポッキーだ、ポッキーだ」と騒いでいる人の中で、その日にポッ○ーを食べた人は普段よりちょっと多いくらいではないだろうか。しかし、奇しくもポッ○ー日と同じ2006年(平成18年)11月11日に長崎市であるイベントが開催された。長崎電気軌道主催の「路面電車まつり」である。こればかりは「だから何だ!」と見過ごせるものではない。

 もともとこの日は、“私の予定”では模試が入るはずだったが、旅行数日前に「模試は1週間後の18日」という事実を知り、慌てて旅行を計画。新聞投稿欄掲載の謝礼(図書カード3000円分)を母に換金してもらい、残りはわずかに残ったお小遣いと貯金を下ろして、何とか旅費と現地で車両部品その他を買える分だけの資金を用意した。

 当日。7:30に自宅を出発。大雨の不安があったが、幸いぱらぱら雨が振った程度で駅まで行くことができた。いつも通り「西友」東の駐輪場に自転車を止め、「みどりの窓口」へ。週末の朝にしては空いていて、すぐに順番が回ってきた。今回も16〜29歳の若者だけが使えるナイスゴーイングカードのお世話になることにした。佐賀―長崎間は、ちょうど距離の端数繰上げで101kmになるので、往復乗車券だけで何と2480円。通常であれば4140円も必要なのに、この安さである。特急料金も乗車券と同じく4割引になるので、肥前鹿島―浦上間は特急自由席を利用することにした。

 7:52発の各駅停車早岐・肥前大浦行きに乗車。

817系であるが、2両の3編成連結なので6両での運転である。肥前大浦行きは前4両で、途中の肥前山口駅で後ろ2両(早岐行き)を切り離した。肥前山口駅からは、白石や鹿島へ通う高校生が大勢乗ってきて、車内は賑やかになった。肥前鹿島駅で途中下車。

 肥前鹿島駅は木造駅舎の残る駅で、狭い待合室とそれにしては広い売店兼土産店、そして「みどりの窓口」があった。一旦駅を出て、駅舎を撮影した。リニューアルされいるようではあるものの、木造らしい雰囲気の残る駅舎だった。

   その後ホームに戻り、次に乗る特急列車を待った。ホームでは、干潟の祭典・ガタリンピックの自転車競技を模したものや魚のふなを売る「ふな市」の案内があった。

  ホームの柱自体も、鹿島市内にある日本三大稲荷のひとつの「祐徳稲荷神社」を模したものになっていた。どれも鹿島独特の文化的行事の案内である。やはり、観光地は「独特」のものでなければならない。ガタリンピックもふな市も祐徳稲荷神社も鹿島だけのものである。それを鹿島市では観光資源として発掘し、大切な文化として将来につなげて行こうというとしているのだ。鹿島市は、佐賀県内でも最も観光戦略の上手な街だと言えるのかもしれない。

 8:38、長崎行きの783系特急「かもめ3号」が入線した。

   車内は禁煙普通車自由席でも空いていて、好きな場所を選ぶことができた。ここから先は長崎本線で最も景色の良い有明海沿岸に沿って走るので、進行方向左側の座席に座った。

 しばらくして車掌が、その後ワゴンサービスの客室乗務員がやって来た。今日はあいにくの天気で、雲仙の山々は見えなかった。

 だが、その景色でも決して飽きることは無く、時刻表では長そうに見えた諫早までの距離もあっという間に過ぎてしまった。近い将来、この景色は国や佐賀県といった“権力者の横暴”によって見られなくなるかもしれない。長崎新幹線開業でこの区間がJR九州から経営分離されてしまえば、いくら県が責任を持って列車を運行すると言っても、博多や長崎までの直通列車が走らなくなった鉄道が数年以内に廃線になるのは目に見えている。トンネルばかりの新幹線と飽きない景色の在来線・・・。どちらが初めてこの地を訪れる人に深い印象を与えるかは、考えてみれば簡単に答えが出そうなものである。現に私のひとつ前に座っていた年配の夫婦は、何か興味のあるものを見つけては指差して何だかんだ話していた。雨の車窓でも、この夫婦にはきっと忘れられないものになったに違いない。

 諫早を過ぎると次第に晴れてきて、太陽も顔を出し始めた。列車は終点・長崎へ向けて、ラストスパートをかけた。

 長大な長崎トンネルを過ぎると、いきなり長崎市街地に飛び出した。トンネルを出てすぐ、左側に多くの路面電車が休んでいる広場がちらっと見えた。本日の目的地、浦上車庫である。入り口は装飾され、十人ほどの人が並んでいた。まもなくして浦上駅に到着した。「路面電車まつり」の会場である長崎電気軌道の浦上車庫には、浦上駅前電停から路面電車を利用する方が便利なのでここで下車したのである。

 路面電車の一日乗車券(500円)を買おうと駅前をうろついたが発売所が見つからず、駅の「みどりの窓口」でたずねてみたら、「ここでも売ってますよ。」という返事だったので安心していると、出てきたのは何とマルス発行のきっぷだった。もちろん、券面はあの水色にJRの文字である。長崎電気軌道の一日乗車券と言うと、路線図や広告の載った専用のきっぷしか使ったことが無かったので、これは驚きであった。

 一日乗車券を買うと、急いで浦上駅前電停へ。程なくして赤迫(あかさこ)行きの1300形がやってきた。

 浦上駅前あたりの区間は、平和公園や原爆資料館に近いことから満員であることが多いが、この赤迫行きは珍しく空いていて、座席に座ることができた。専用軌道に入って、浜口町電停、松山町電停と停車し、大橋電停は高速通過して浦上車庫前電停に到着した。私はここで下車したが、同じ目的の人もいてどんどん電車から降りていた。電停から浦上車庫はすぐ目の前で、開場を待つ人の列の最後尾が見えた。待つ人の列は三十人ほどに増えていて、今か今かと開場時刻の10:00を待っていた。待っている間には、路面電車まつりの案内とアンケートが配布された。

 10時になり、女性のアナウンスとともに入場が開始された。しかし、それとともにダッシュする人は一人もいなかった。

Aへ

旅行記&特集へ

トップへ