雨の長崎・路面電車まつりの旅A

2006年(平成18年)11月11日に長崎電気軌道浦上車庫で開催された「路面電車まつり」に行った時の旅行記です。

 先ほど配布された案内を見ながら、お目当ての「電車部品販売」の場所へ向かった。既に7、8人ほどの人が部品を物色していて、買うものが決まった人から先にお金を払っていた。先着順や販売点数制限はないらしい。私もさっそく品定めを開始した。

 次の瞬間、私は目を疑った。「赤迫」「正覚寺下」「貸切」などの方向幕が完全ロールで500円 (お一人様1点まで)、「築町」「思案橋」などの停留所名や「右折車軌道外待機」の表示板が300円、計器が100円、暖房切り替えスイッチが50円・・・。これは良い意味で安すぎである!ちなみにその近くではオークションに出す車内灯や革製の本物の「つり革」が並べられていて、そばの机では何人かの人が入札価格を紙に書いて係りの方に渡していた。

「方向幕欲しい方、どうぞ〜」

と係りの方が数本の方向幕ロールを片手に案内していた。500円という値段にあっけに取られていたが、気づいたときには500円払って方向幕ロールをゲットしていた。そばの壁には何枚かの停留所名表示板や「右折車軌道外待機」の板が立てかけられていて、年配の男性が物色していた。電停に実際に設置してあったものなので縦が大きく、持ち帰るのはどうかな、と悩んだが、そのへんのコンビニで発送すれば良いだろう、ということにして、広告入りの「34 思案橋」と書かれた表示板をまず購入。しばらく品定めを続けた後、「右折車軌道外待機」の表示板も購入して「思案橋」とともに係りの方に新聞紙に包んでもらった。しかし、これだけ買ってもまだ1100円しか使っていない。おそらく高いものばかりだろう、と思って3000円ほどお金を用意してきたが、まだまだ買えるぞ、とばかりにつり革3本(計600円)や降車ボタン2個(計100円)、運転台にある計器1個(100円)を立て続けに購入した。だが、この値段で採算が取れるのか、とこちらの方が心配になったので、係の方に質問してみた。すると、

係りの方:「私もこれだけ安くして大丈夫なんかなぁと思うけど・・・」

というこれまた意外な答えが返ってきた。

私:「私もびっくりしました。福岡のあたりのイベントだと、こういうのが何千円もするんですけどね。」

係りの方:「そうなん?へぇ。じゃあ、これはどう?」

と、「暖房切り替えスイッチ」をガチャガチャさせながら勧めてきた。値段は50円。「あ、それも!」と何の躊躇も無く買った。既にリュックサックの中はパンパンに膨れ上がっていた。お金はまだたくさんあるのに・・・と、先に「輸送能力超過」になってしまったことに驚いた。

 近くで買っていた常連客と思しき年配の男性も私と同じく停留所名表示板を購入済みで、顔なじみらしい係の方と「私は路面電車の博物館を作ることが夢なんです。」とか、「これはパンタグラフに使われていたやつだね。」などと話していた。係りの方も来場客に向かって、「ここまで来たからには方向幕を一本買ってねー!」「いらっしゃい!」と威勢の良く声をかけていて、非常に良い雰囲気だった。

 1ヶ月前に行った「JR九州小倉工場まつり」のあの乱闘騒ぎは一体何だったのだろうか、と正直思った。売っているものはさほど変わらないし、路面電車の部品自体がそう簡単に手に入るものではないから、珍しさではこちらの方が上である。やはりあの乱闘騒ぎは、一部の心無き来場者と危険な販売方法を取った主催者側に原因があると言えるだろう。

 一通り買ったので、メインイベントとも言える「他都市から来た電車」の撮影を行った。元東京都電の700形や元仙台市電の1050形、元熊本市電の600形、元小田原市内線の150形が展示されていた。

少し離れた場所には、明治生まれの160形(元西日本鉄道)が止められていて、こちらはこれから遊覧電車(乗車は無料)として長崎の街に繰り出すのである。遊覧電車の発車時刻になると、満員の乗客を乗せて発車した。車輪は準郊外電車として設計されただけに大きく、加速は明治生まれを感じさせないものであった。

 その後、工場内に移動した。工場内では、最新型の3000形が展示されていて、半地下室や2階からとさまざまな方向から電車を観察できるようになっていた。

 工場内には、それ以外にも500形がジャッキアップされて展示されていた。

 工場内を簡単に見学して、併設されている本社ビルの「電車資料室」に向かった。

 しかし、行く途中の本社ビルの階段で先ほど買った停留所名表示板と「右折車軌道外待機」を包んでいた新聞紙が破れ始めたので、急遽引き返した。もう片方の手には方向幕も持っているし・・・。こうなればコンビニに発送しに行くしかない、と思って一旦会場を後にし、いざ大通りに出てみたものの、コンビニらしき店は見つからない。そういえば、平和公園近くの松山町交差点に「ファミリーマート」があったなぁと思い出したので、徒歩で向かうことにした。幸い下り坂で、すぐ横は平和公園の森だったので、もう少しだろうと思ってひたすら歩いて行くと、ようやく「ファミリーマート松山店」の看板を発見し、早速店内に入った。

 平和公園や原爆資料館に近いこともあり、店内には修学旅行生と思われる制服姿の中学生が見受けられた。店員の方に「荷物の発送はできますか?」と聞いてみると、できるそうなので早速手続きをすることになったが、私の持っている新聞紙にくるまれた怪しげな物体を見ると、店の奥に行って店長さんと思われる女性を連れてきた。

店長さん:「これは何ですか?」

私:「そこで開かれている路面電車まつりで買ったものですけど・・・。」

店長さん:「少しでも壊れたらいけませんよね?」

私:「はい。」

店長さんは「うーん、それじゃあ・・・」と少し考え込んだ後、先ほどの店員さんに「サイズを測って」と指示を出すと、外に出てダンボールを広げ始めた。まさかと思ったが、この場で包装をするらしい。私はただ呆然と店の隅っこでダンボールに包まれてゆく「思案橋」と「右折車軌道外待機」を見ていた。包装作業が終わって、発送手続きに入り、着払いで自宅に送ってもらうことにした。これで何も買わずに店を出るわけには行かないと、「ファンタバナーナ味」という初めて見るファンタとおにぎりセットを買って店を出た。一応、「お手数をかけました。ありがとうございました。」とお礼の言葉は述べたが、店長さんや店員さんには忙しいのに大変な手間をかけてしまった。それなのにダンボール包装までしてくれたのだ。この親切には今でも感謝している。もし来年行くときは、発送だけで済ませられるようにダンボールも持って行こう、と松山町交差点を渡りながら、早速来年の対策を練った。

 ちょうどお昼前だったので、平和公園で昼食をすることにした。

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