〜主張A着工したのに……複線化問題噴出!〜

―複線化費用、JR九州が難色を示す―

 長崎新幹線の新規着工区間は、武雄温泉―諫早間になっているが、このほか、新幹線の通る佐世保線肥前山口―武雄温泉間の複線化も予定されている。この工事費用は、「在来線整備スキーム」という方式だと120億円とされ、このうち国と佐賀県が25%負担で30億円ずつ、JR九州が50%の60億円を負担することになっている。JR九州は、負担が大きすぎると難色を示している。

 そのため、佐賀県やJR九州は、「新幹線整備スキーム」での複線化を要求。この場合、国が線路の保有者となり、佐賀県負担は22億円、JR九州は国に毎年鉄道使用料を払うことになる。だが、国土交通省は財政難を理由に「在来線整備スキーム」による複線化を明言している。「踏切の立体交差化(高架化)を行えば、道路特定財源が使えるのではないか」という声もあるようだが、道路特定財源がなぜ鉄道高架まで使えるのか、という疑問の声も挙がっている。

 仮に、同区間が単線のままだと、1時間に通る列車本数は、新幹線上下4本、在来線特急上下2本、普通列車上下2本の計8本となる。これでは、「ダイヤが組めない」(JR九州)という。列車本数を減らせば、利便性が下がってしまう。新幹線建設推進派にとってはどうしても複線化しなければならないのだ。

 しかし、用地買収に2、3年、複線化工事に必要な時間は4、5年であり、実質残された協議時間は2、3年程度である。また、複線化されると、町が分断されると危惧する沿線自治体の首長もおり、今後、さらに協議が難航するおそれがある。

―財源以外にも問題が―

 複線化工事は、そう簡単なものではない。特に用地買収が大きな問題になってくる。だが、佐世保線沿線でも都市化が進み、沿線にはスーパーや企業のビルが線路のそばまで並んでいるところもある。また、古くから住んでいる住民もおり、先祖代々の土地を手放したくないと主張する人も出てくるだろう。下の写真は、佐世保線大町駅付近の様子だが、ご覧の通り、線路のすぐ横にはスーパーや住宅、企業のビル、道路がある。複線化するとなれば、多くの家屋が立ち退きを強いられることになる。

 また、先述したように、複線化すると地域がさらに分断されるという懸念もある。このため、全線高架化を望む声がある。だが、この区間の全線高架化は、他の区間に比べて容易ではない。上記の都市化に加え、線路上を跨ぐ道路が多いのだ。

 例えば、江北町では国道34号線が肥前山口駅を発車してすぐの場所を跨いでいる。さらに、武雄市では長崎自動車道と国道34号線が近接して跨いでいる。この部分では道路橋の上に鉄道高架橋を架ける必要がある。まるでジェットコースターだ。当然、それだけ高い建物を建てなければならないので、工事費が増える。さらに、勾配区間が増え、電車のエネルギー効率や加速、乗り心地が悪くなる。道路橋の下だけ地上を走るという手もあるが、これも下に行ったり上に行ったりを繰り返すので、結局同じことだ。また、高架化するとなれば、大町、北方、高橋の各駅の駅舎やホームを全て改築する必要があり、この費用をどう工面するか、という問題も出てくる。

 財源問題を抜きにしても、複線化及び高架化は、ジェットコースターの如く、曲がりくねった道のりが予想される。本当に新幹線開業までに間に合うのだろうか。

―なぜ今頃……―

   そもそも、なぜ今頃このような問題が出てくるのだろうか。この区間が完成しないと新幹線が走れないと言うのなら、本来は着工する前に協議を終えてしまわねばならない問題だ。やはり「見切り発車」だったのだ。そう言えば、後からぼろぼろと問題が出てくる点では、あの「後期高齢者医療制度」とよく似ている。推進派のやることは、多くの点が「甘い見通し」の上に成り立っているのだ。

文中参考:

複線化問題:佐賀新聞2008年(平成20年)5月5日付1面

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