〜主張D縮小する日本社会―長崎新幹線計画の推進は時代錯誤だ―

東京の発展もいずれは止まる。

   「人口減少」「少子高齢化」。今の日本が抱える大問題だ。国も地方も慌てふためいているが、有効な手立てもなく、時間だけが過ぎ去ってゆく。

 2007年(平成19年)5月30日、佐賀新聞1面トップで2030年(平成42年)までに日本の全都道府県で人口が減少に転じる(厚生労働省推計)ことが報じられた。「何だ、まだ先の話じゃん」と思ってはいけない。今、一極集中が進んでいる東京都も、出生率が日本で最も高い沖縄県も人口が減少するのだ。佐賀県では、もう何十年も前から人口が減り続けており、2035年(平成47年)には現在の約86万人からさらに2割弱ほど減って71万人2000人になると予想されている。

 一方で、少子高齢化は進み、日本は2007年(平成19年)に超高齢社会(総人口に占める65歳以上の割合が21%以上)に突入した。税収が減る一方、医療福祉への歳出は増える。税金を使った無駄な投資はいい加減に中止すべき段階に来ている。

 現在、佐賀・長崎県で進められている長崎新幹線計画は、日本中が「未来はバラ色」を確信していた高度経済成長期に立案されたものだ。高度経済成長期は、人口が増え、経済は発展し、何を造っても儲かる時代だった。だが、それから3、40年後の未来がこれである。人口減少時代に突入し、少子高齢化は進む。石油はあと40年、原子力発電の燃料になるウランも残り85年。経済発展はそろそろ限界だ。

 しかし、それでも多くの政治家や経済人は、日本のさらなる発展を信じて疑わない。その発展の一環として長崎新幹線計画が位置づけられているのだ。

「地域のため、未来の佐賀県民のため」

 古川佐賀県知事はこれを何度言ったことか。だが、現実を見て欲しい。長崎新幹線は、時間短縮効果が小さいなどの理由で多くの両県民が主張しているように、「今のままで充分」。つまり、造る必要性が小さい無駄な公共事業なのだ。これに使われる費用は、2700億円。中には、旧国鉄が造った東海道・山陽新幹線などを分割民営化時にJR各社が買い取ったことによる資金も含まれ、佐賀県は「この資金は、法律で新幹線建設のみに使用できることになっている」と再三主張している。しかし、それは法律自体がもはや時代に合っておらず、その上新幹線建設資金の一部に過ぎない。残りは、国や佐賀・長崎県が負担することになる。

 また、佐賀・長崎県は、新幹線が開業すると、長崎本線の肥前山口―諫早間の鉄道施設を14億円で買い取った上で、その後も維持管理をして行かなくてはならない。JR九州は、新幹線開業後20年間の運行を約束しているが、その後はどうなるのか明らかでない。仮にJR九州が運行を打ち切った場合、それも佐賀・長崎両県でしなければならない。だが、古川知事が「並行在来線は、責任を持って維持してゆく」と言っている。こう言う以上、両県は、50年後も――極端な話かもしれないが――100年後でも鉄路を維持しなければならない。しかし、冒頭で述べたように人口が減り、医療福祉への歳出は増える。一体、どのようにして財源を確保しようと言うのだろうか。

 2007年(平成19年)2月にも佐賀新聞1面に人口減少に関する記事が掲載されていたが、その中で「次世代の選択肢を奪う過剰な投資は控えるべき」「身の丈に合った街づくりを」という解説が添えられていた。まさにその通りだと思う。今の日本は、私たちだけのものではない。次世代やその次の時代を担う人々のものでもあるのだ。未来を作るには、今を大切にしなければならない。

 何が必要で何が不要なのか。縮小社会には、縮小社会なりの政策を行ってゆくことが大事だ。時代が変われば、政策も変えなければならない。長崎新幹線計画の推進は、時代錯誤であると言わざるを得ない。

文中参考:(文中に直接提示しているものは除く)

超高齢社会:「ウィキぺディア 高齢化社会」
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E5%8C%96)

 

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