SLやまぐち号で行く、夏の山口・ローカル線旅行A

SLやまぐち号の乗車と山口県内JR全線制覇を目的に実行した旅行の旅行記です。

   列車は山を下り、11:10、終点の長門市に到着。1分の乗り換えで、今度は益田行きのキハ120形に乗車。車内は、学校帰りの高校生やこれから観光地の萩に行くものと思われる観光客などで既に満席だった。それならば、と運転席横の“展望スペース”で前方風景を眺めることにした。列車は、11:11に長門市駅を発車。

 しばらく行くと、左手に海が広がった。

 その後、再び山の中を通った。

 面白かったのは、連絡橋が全身黄色という駅。ここまで派手な連絡橋は初めて見た。

 列車は再び海のそばを走るようになった。

 青い海、打ち寄せる白い波。山陰の海には、沖縄の海とはまた違った美しさがあった。足が疲れてきたので、空いている座席に座った。

 赤い屋根が並ぶ漁村や集落のそばを通る。山口県の家は、特産の「石見瓦」という赤い屋根瓦を載せた家が多い。中には、集落のほとんどが石見瓦の赤い屋根だったところもあった。石見瓦は、「寒さに強い」「雨に強い」「台風や地震に強い」「軽くて薄い」という特徴があるそうだ。

 列車は海のそばの崖の上を走るようになった。こんな日に下の岩場で泳ぐのは最高だろう。

 13:01、列車は終点の益田駅(島根県)に到着した。

益田駅には、何とDD51形国鉄色重連が停車していた。非常に珍しかったので、早速撮影を開始した。

 撮影をしていると、ホームの下から先ほどのキハ120形の運転士さんが声を掛けてきた。

運転士さん:「列車は撮れるね?」

私:「ええ、よく撮れます。DD51がいたのでびっくりしました。」

運転士さん:「このDD51は、益田から、一駅・・・二駅・・・三駅目の駅に中国電力の専用の貨物線があってね、そこで出た煤を、山陽の宇部興産まで運ぶ為に置いてあるんよ。普段は平日だけ運行するのだけれども、中国電力と宇部興産の景気が良くてね、JRに土日も運転するように言われてるんよ。DD51の国鉄色の重連を見られるんは、日本でもここだけや!それにしても国鉄色のDD51、かっこええよなぁ。何時までいるの?」

私:「次の山口線で津和野まで行って、『やまぐち』号に乗る予定です。」

運転士さん:「惜しいなぁ・・・。あと2時間待たないとこのDD51は動き出さないんよ。私が担当だったら、エンジン掛けてあげてもいいけれど・・・。」

私:「それは残念です・・・。山口線の本数が多ければもう少し待っても良いのですが、次の列車を逃すと、『やまぐち』号に間に合いませんので、今日はちょっと無理ですね。それにしても、最近は国鉄色の機関車が少なくなりましたね。」

運転士さん:「そうやなぁ。貨物の機関車はカラフルに塗られて・・・。中には国鉄色とは(上下が)反対に塗られたようなのもおるし。私は国鉄色が好きなんやけどなぁ。DD51が好きなん?」

私:「いえ、私は元々寝台特急が好きなんです。DD51牽引の『出雲』も無くなってしまいましたね。私は結局一度も乗ることも撮ることもなかったんですけど。」

運転士さん:「出雲かぁ。実は、私は浜田発『出雲』の最終運転士だったんよ。この前の出雲市発の最終便は、米子に運転区が変わってできなかったけれども。」

私:「ええっ!そうなんですか!!」

 意外な発言だった。寝台特急の最終便を運転した運転士さんと今、話していることが信じられなかった。DD51形国鉄色重連に、浜田発寝台特急「出雲」の最終便を運転した運転士さん・・・。益田駅では、本当に貴重な体験をしたと思う。

 その運転士さんは、さらにJR九州の車両もベタ褒めした。

運転士さん:「どっから来たの?」

私:「九州の佐賀です。」

運転士さん:「九州から!九州ええよなぁ!!白いかもめにソニック、北九州のあたりは結構ええ列車走っとるし、気動車でもキハ200系みたいなええ車両走らせてるし。今度また来たみたいやね、LEDの大きな字を表示できるのが。九州はどれでも“よかですばい。”(笑)」

私:「キハ220ですね。それは大分に投入されたみたいですね。私はまだ見たこと無いですけど。」

運転士さん:「将来はJR九州に?」

私:「ええ、まぁ・・・。」

運転士さん:「JR西日本においでよ。私の知り合いに、鹿児島県の島から来たのがおるけど、九州は採用枠少ない言うて、JR西日本に入った人もおるし・・・、北海道から来たのもおる。その点、西日本は結構採用枠大きいから入りやすいよ。ところで、高校何年生?」

私:「一年です。」

運転士さん:「普通校で進学校?」

私:「はい、そうです。」

運転士さん:「大学から入ると、誰でも偉くなれるよ。あなたもJR西日本に入れば、絶対偉くなれる!」

私:「ありがとうございます。がんばってみます!」

 そして、その運転士さんは、こんな言葉を言って、詰め所に戻っていった。

「好きだったら、何でも務まる。」

 格好いい!!座右の銘にしたいくらい良い言葉だ。この運転士さんは、本当に鉄道が好きなのだろう。私は、線路を渡りながら戻ってゆく運転士さんを見ながらそう思った。

 さてさて。運転士さんから貴重なお話を頂いたあと、私は途中下車して駅前を散策した。駅前には、何やら新しい商業施設ができたらしく、そのオープンイベントか何かの太鼓の演奏が行われていた。私は、昼食の調達のために、コンビニを探した。小さな商店街では、どのようなゆかりがあるのか分からないが、サザンオールスターズの曲が流れていた。

 ようやく“赤い看板の”コンビニを見つけることが出来た。時間が少なくなってきたので、おにぎりと飲料を買って、5分ほど歩いて駅に戻った。その前に、駅舎を撮影。

 益田駅では、「みどりの窓口」で、鳥栖⇒佐賀の乗車券と自由席特急券を購入。旅の最後に使う予定だが、きっぷの下に印刷される「益田駅発行」という文字が記念になるだろうと思って、ここで購入したのだ。

 新山口行きのキハ40形は、既に入線していた。

 車内は空いていて、ボックスを確保できた。発車時間前には、大半の席が埋まっていた。13:57、列車は益田駅を発車した。

 山口線は、先ほどの山陰本線とは違って、完全に山の中を走る路線なので、夏の海を見ることは出来ないが、夏の山々もまた良い風景である。列車はどんどん山の中へ入ってゆく。

 

 列車に揺られること40分、津和野の街が見えてきた。

 14:40、列車は津和野駅に到着した。

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