福岡県内JR全線&小野田線制覇完了旅行D

管理人が、夏休み最初の長距離旅行として香椎線、筑豊本線、小野田線の完全制覇と西鉄宮地岳線乗車に乗車した時の旅行記です。  長門本山駅は、単式ホームで、待合室とトイレ、郵便ポストだけの寂しい駅である。だが、それがローカル線の終着駅らしさをよく表していた。

 駅から徒歩2、3分くらいのところに広い空き地があり、何人かが犬の散歩をしていた。

そこからは瀬戸内海がよく見え、道の条件は悪いが、散歩コースとしては丁度良い場所だった。

 ザザーンという波の音と、遠くで唸る、「ブーン」という電車の音以外何も聞こえない。実に静かな場所だった。

 水平線がパァーッと明るくなった。船がゆっくりゆっくりと動いてゆく。時間に縛られて生活する私にとって、非日常的な風景が目の前にあった。私は、小野田線のイメージとして、沿線には工場ばかりが建ち並ぶ白と黒の路線だと思っていた。しかし、実際にはこのような素晴らしい風景を見ることが出来るのだ。小野田線に乗って本当に良かったと思う。

 再び長門本山駅に戻る。駅の近くには赤い花が咲いていた。これは良い組み合わせだと思って、電車といっしょに撮影した。

 電車には既に乗客が何名か乗っていて、先ほどの大学生グループのほかに、これからお祭りに行くものと思われる家族連れや着物姿の女性が乗っていた。往路に、北九州の駅でも着物姿の女性を何人も見たが、7月下旬の土曜日はどこもお祭りが行われるようである。乗客たちが夕日に照らし出された。つり革で遊ぶ子供たち。それぞれに会話を楽しむ人々・・・。発車時間までまだ何分もあるが、そのような時間は全く気にしていない様子だった。いつ発車しても良いような鉄道路線に、時間なんて気にしない乗客・・・。

 私ははっとした。学校では常に5分前行動を呼びかけられ、たくさんの宿題が期限付きで出される。世の中は刻々と変化し、気にも留めずに忙しく動き回る。私は、このような忙しい空間に翻弄され続けられているような気がする。しかし、この電車の車内だけは、そういったことは何もなく、人々は気ままに時間が経つままに発車を待っている。それは、「ALWEYS 三丁目の夕日」という映画の中での“時間”とよく似ていた。私にとって「非日常的な空間」だった長門本山駅と電車、そして海。17:03、電車は一応定刻通りに長門本山駅を発車した。

 雀田駅では、小野田行きの123系に乗り換え。車内は混んでいて、立ち席となった。 途中、橋の上の駅に停車した。まっすぐに延びる道路、日常が詰まった街。それを上から見るのもなかなか楽しい。

 そして、その橋の真下にはこのような名前の旅館が。なるほど・・・。

 電車は17:27に小野田駅に到着。

 途中下車して駅舎を撮影した。

   再びホームに戻って、下関行きの105系に乗車。車内は空いていたが、ロングシートだったのが少し残念だった。そういえば、今日乗ったJR西日本の電車は、全てロングシートだ・・・。

 約40分の乗車で終点の下関に到着。

   2分の接続で門司行きの415系に、門司では1分の接続で荒尾行きの813系快速6連に乗り換えた。車内の座席は8割が埋まっていたものの、トイレの前のボックスだけが無人のまま空いていたので、そこに座った。

 だが、場所が場所だけに、やや臭いが・・・。少し窓を開けて換気を行った。もしここの窓が開かなかったら最悪である。

 空は暗くなり、街明かりが車窓を飛ぶように走り去ってゆく。博多を過ぎ、

 二日市を過ぎる頃には車内は静かになり、外は完全に真っ暗になった。。

 原田に到着した。ホームには何人かの人が電車を待っていたが、中には不良っぽい集団もいた。正直なことを言うと、私はこの手のタイプの人間が大嫌いで、一番知り合いにしたくない人たちである。

 ドアが開いた。すると、いきなり先ほどの不良グループ3人が私の座っていたボックスに座ってきたではないか。私は焦った。狭くても2人掛けの座席に座れば良かった、と後悔した。その不良グループは、「どっから来たの。」と聞いたり、「タバコ吸わない?」などと黒いケースからタバコを差し出したり、ロケット花火を「あげるよ。」と言って、私が拒否すると窓際に放置したり・・・。私は答えることができるものにはなるべく言葉を少なくして答え、悪い誘惑は全て拒否した。その不良グループは、ロケット花火を窓際に放置したまま、基山駅で下車した。

 私は恐怖から開放されてほっとしたが、このロケット花火をどうにかしなければならない。私は次の鳥栖で降りなければならないが、そもそもこれは危険物にあたるし、そのまま持って帰ると私が犯人扱いにされるかもしれない。しかし、そのまま放置すると、先ほどの不良グループのような人たちが遊び半分に火をつける可能性がある。そうなるとどうなる。車内でロケット花火が爆発し、夜の鹿児島本線は大パニックに陥るだろう。乗客にけが人が出るかも知れない。そうなれば・・・。私は鳥栖に到着したら、急いで車掌さんのところに駆け込むことに決めた。

 鳥栖到着前にできるだけ車掌さんのいる車両に近づこうと後ろへ後ろへと移動。しかし、後ろの車両には立ち席の人が何人もいたので、途中でストップ。電車は鳥栖駅6番乗り場に入線し、ドアが開いた。

 編成の最後部に車掌さんがいた。車掌さんは「ドアが閉まります。ご注意下さい。」という放送をしているところだった。急いで車掌さんの所へ行く。

私:「すみません!車掌さん!!」

車掌さん:「何ですか?」

私:「あの、さっき基山で降りた人たちが、前から3両目の車内にロケット花火を放置したまま降りて行かれました。」

車掌さん:「火ば(を)つけてですかっ!!」

私:「いえ、そのままです。」

車掌さん:「裸のまま(火をつけていない状態)ですね?」

私:「はい、そうです。前から3両目の右側の窓際、トイレの前です。」

車掌さん:「分かりました。前から3両目の右側ですね?後で回収しに行きます。ご報告ありがとうございました。」

 車掌さんはやや興奮した様子で笛を吹き、ドアを閉めた。既に駅の発車放送は終わっていて、ホームにいた利用客は、車内で発車を待っていた。このやり取りで電車を少し遅らせてしまったかもしれないが、一応現場にいた者としての使命は果たせたと思う。その後、鹿児島本線の車内で花火が爆発したという報道は聞いていない。

   鳥栖から先の長崎本線の丁度良い接続列車が無いので、ここは特急「かもめ」を利用することにしている。乗車券と特急券は既に先ほどの快速車内で購入済みだ。まもなく、長崎行きの885系「かもめ」が入線した。車内はほぼ満席だったので、デッキで立つことになった。

 順調に進んでいた今回の旅行。最後の最後にハプニングが発生してしまったが、全ての目的を果たせたことは良かったと思う。

 だが、往路に立ち寄った、放火されて未だ完全に復旧しきれていない下関駅やロケット花火をいつでも火をつけることが出来る状態で車内に放置する人など、鉄道利用者を不安に陥れる行為をする人が多いことは非常に残念だ。鉄道は、身近で、最も安心して利用できる交通だ。通勤・通学、買い物、旅行・・・。それぞれ目的は違うだろうが、皆、鉄道という交通機関を信頼して利用している。それを揺らがすようなことをする人間は決して許されるものではない。たとえそれが「未遂」に終わった事件だったとしても。

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