長崎新幹線とは

長崎新幹線の概要、経緯、特徴を解説したページです。

長崎新幹線の概要

   九州新幹線西九州ルートは、今、全国で整備が進められている整備新幹線の一つである。長崎ルートとも呼ばれ、名前の通り西九州を走る予定の新幹線だ。なお、当サイトでは一般的に広く使われている「長崎新幹線」という名詞を使うことにする。

 建設区間は武雄温泉〜長崎間約66kmとなっているが、現段階では武雄温泉〜諫早間の建設が先に行われる予定だ。列車自体は新規建設区間及び鹿児島新幹線線路と在来線の長崎本線、佐世保線を利用して博多〜長崎間を結ぶことになっている。なお、新幹線区間の標準軌(1435ミリ)と在来線区間の狭軌(1067ミリ)の両方を走るため、フリーゲージトレイン(軌間可変電車・詳細は下記の「長崎新幹線の特徴」にて)の導入が予定されている。佐賀県のホームページによれば、設置駅は武雄温泉、嬉野温泉(仮称)、新大村(仮称)、諫早、長崎となっている。だが、これは新規建設区間のみの設置駅(停車駅)であり、先述したように列車は博多発で予定されているので、博多〜長崎間では、上記停車駅に新鳥栖、佐賀、肥前山口が追加される。

 なお、建設区間は複線となるため、新幹線車両が通る佐世保線肥前山口〜武雄温泉の複線化も予定されている。また、新規建設区間の武雄温泉―諫早間は200km/h運転を行うものの、1067ミリによる整備が行われる予定だ。つまり、狭軌による「スーパー特急方式」の運転になる見込みだ。

長崎新幹線の経緯

 長崎新幹線の基本計画が国によって初めて決定されたのは1972年(昭和47年)で、翌年整備計画が決定。1985年(昭和60年)に建設ルートが発表された。この時発表されたのは早岐駅(佐世保市)経由のもので、後に武雄温泉駅から南下し、嬉野、大村を通る新しいルート案に変更された。

 1992年(平成4年)、JR九州は長崎本線肥前山口〜諫早間の経営分離を前提としたスーパー特急方式(ルートは短絡線)の収支試算結果を公表した。このころから新幹線建設予定沿線自治体の動きが活発化し始め、嬉野町(現嬉野市)が「嬉野温泉駅」設置の、鹿島市や江北町などからは長崎本線の経営分離に関する要望書が出された。

 1998年(平成10年)、日本鉄道建設公団が嬉野温泉及び新大村経由の新ルートと嬉野温泉駅設置を公表した。2002年(平成14年)、スーパー特急方式による武雄温泉〜長崎間の工事実施計画認可申請が行われた。2004年(平成16年)、佐賀県の古川知事が「並行在来線の経営分離はやむを得ない」と表明。事実上佐賀県は新幹線建設に同意したのだった。同年、政府与党の申し合わせで、長崎新幹線は「地元の調整が整った場合に着工する」ことが発表された。

 だが、長崎本線沿線の鹿島市と杵島郡江北町が長崎本線のJRからの経営分離に根強く反対。古川知事は、反対している両市町に対して振興策を提示して説得したが、どちらも「新幹線は不要である」「あくまでも長崎本線はJRによる経営を存続させるべきだ」と一歩も譲らぬ構えを見せていた。

 ところが、2007年(平成19年)12月に政府与党が「今後はJR九州、佐賀県、長崎県の三者間で調整を促進する」という方針を示した。その数日後、経営分離が問題になっていた長崎本線を「新幹線開業後20年間をJRが引き続き運行する」ということで、先の三者が合意した。これにより、長崎本線沿線自治体の同意は不要になり、新幹線計画が大きく前進することになった。しかし、鹿島・江北外しの決定は、政治権力の濫用とも言え、多くの県民から非難の声があがっている。

 その後、いくつかのプロセスを経て、国土交通省から着工の許可が下り、2008年(平成20年)4月に武雄温泉―諫早間が着工した。この間、江北町町長選挙で反対派の現職が勝利したが、民意が反映されないまま着工に至ったことで、再び多くの県民から集中砲火が上がった。

 しかしながら、着工後に、新幹線の経路である佐世保線肥前山口―武雄温泉間の複線化に関して、佐賀県と国土交通省、それにJR九州の間で工事費用の財源問題が明るみになるなど、新たな問題が浮上している。佐賀県などは10年後の開業を目指すと言うが、用地買収だけでも数年かかると言われており、残された時間は限られている。仮にこの区間が複線化されない場合、「ダイヤが組めなくなる」(JR九州)という致命的な問題も発生する。

 本当に長崎新幹線は開業“できる”のか。既に着工されてしまったが、今後の動向にも注目しなければならない。

長崎新幹線の特徴

 長崎新幹線の特徴は、鹿児島新幹線との線路共用(1435ミリ/博多〜新鳥栖間)及び新鳥栖以西で既存の在来線(1067ミリから軌間変更なし)と狭軌の高速新線を利用することだろう。新幹線車両が在来線を走っているケースは、秋田新幹線と山形新幹線(正式には新幹線ではない)、博多南線の例があるが、このうち、前者は在来線の線路を1067ミリから1435ミリに軌間変更したものであり、後者は新幹線の回送線を利用している。

 ご存知の通り、新幹線と在来線の軌間は違う。ならば、どうやって直通させるのだろうか。そこで、線路の軌間を変えるのではなく、車両の車輪そのものを幅を変えることができる、フリーゲージトレイン(軌間可変電車)の導入が決定したのだった。

長崎新幹線への導入が予定されているフリーゲージトレイン(試作二次車)。日豊本線車内から撮影。

 このフリーゲージトレインの導入により、博多〜長崎を最速1時間19分で結ぶことができるようになるそうだ。これは現在の在来線特急「かもめ」の最速所要時間より28分の短縮となる。フリーゲージトレインは未だ営業運転を行っておらず、現在試験中だ。仮に完成できた場合、長崎新幹線への導入が日本初となる見込みだ。

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